「おもちゃを片付けるように言い聞かせても聞かずに、さらに散らかす」「やってはいけないといっていることほど、やりたがる」育児をする上で、どのご家庭でも直面し、その対応に頭を悩まされておられるのではないでしょうか。私にも生後2か月の息子がおりますが、寝かしつけようとするたびに大泣きし、気づけば2時間経過していることもしょっちゅうあります。

お子様に対する効果的なアプローチは、発達段階やその行動や反応が生じる状況によって異なります。うちの2か月の息子に対話を介して「時間になったら眠ろう!」という約束を取り付けることは恐らく無理でしょう。子どもの成長を待ちながら出来るだけニコニコとして声をかけたり、気持ちを紛らわせながら(そのうえ、言語が発達しても私の話を聞いてくれるとは限りませんが…)大人側が対応していくほかありません。

しかし、頭では分かっていてもなかなか気持ちが切り替えられなかったり、出来ない自分を責めてしまうことが誰しもあります。イライラやモヤモヤを切り替える手法はいくつもありますが、私がカウンセリングの際にご説明している方法をご紹介いたします。

呼吸法

イライラが高まっていると呼吸は浅くなり、頭の中でも「嫌だ!」「ムカつく!」といったネガティブな言葉が浮かんでいるものです。深呼吸によって新鮮な酸素を取り組むことで自律神経が整い、気持ちが穏やかになります。また、「嫌だ!」「ムカつく!」といったネガティブな、頭の中でふと湧き上がる考えを「自動思考」と呼びます(もちろん、ポジティブな自動思考もあります)。じっくりと熟慮し、検討する「思考」と異なり、自動思考は根拠に乏しく、置かれた状況に対して反射的に生じているという特徴があります。この自動思考に、人間の感情や行動は大いに影響を受けます。例えば、「ジュースが半分入ったコップ」という「状況」を「ジュースが半分”も”入っている」か「ジュースが半分”しか”入っていない」とどちらで捉えるかによって「感情」は変わってきます。特に、イライラやモヤモヤが強くなっているときには、「自分はダメな奴だ」とか「自分は価値のない人間だ」というようなネガティブな自動思考が強まっている可能性が高いです。

深呼吸をし、呼吸に意識を向けることで、ネガティブな自動思考から少し距離を置き、今の状況を冷静に捉えなおすことが出来ます。

方法としては以下の通りです。

  1. 「1,2,3,4,5」と頭の中でゆっくり数えながら息を吸います。
  2. 「1,2,3,4,5」と頭の中でゆっくり数えながら息を吐きます。

少し気持ちが落ち着いてきたときに、自分の考えや気持ちを振り返ることも効果的です。”自分の気持ちを自分で気づくこと”、”どんなパターンでネガティブな自動思考が生じているかに気づくこと”(これらをセルフモニタリングと呼びます)によって少しずつ対処(もちろんこれは、問題解決だけではなく大人がスルーできるようになるということも含まれます)できるようになります。

筋弛緩法

呼吸法と同様に、自律神経を整える方法です。人間の身体は緊張状態から一気に脱力することによってリラックスする機能が備わっています。やり方は簡単です。

  1. 「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10」と頭の中でゆっくり数えながら肩を縮こまらせ、出来るだけ力を入れます。
  2. 肩の力を一気に抜きます。

筋弛緩法そのものに気持ちを落ち着ける効果がありますが、呼吸法と同様に落ち着いたところで自分の考えや気持ちに意識を向け、振り返るとより効果的です。

環境を変える・別のことをする

別の部屋に行く、いったん外に出る、環境を変えることでイライラしている出来事から意識が逸れるので有効です。また、温かい飲み物を飲む、楽しいことを考えるなど、イライラが減少し、気持ちが弾むようなことをしましょう。ただ、状況によって出来ること・出来ないことがあります。例えば、「甘いものを食べる」とリラックスが出来る場合、「ダイエットのイライラ」を「甘いものを食べる」で解決することは出来ません。

自分がリラックスできることを、リストにしておくことも有用です。いったん深呼吸をし、数あるリラックス方法の中から今ここで出来そうなことに取り組んでみましょう。

自分を褒める、労わる

まずはともあれ、自分を褒めましょう。「イライラを抑えようとあれこれ試してみて、自分は凄いじゃないか」など、実際に和らいだかはとにかく「試みようとしたプロセス」そのものを褒めることが重要です。

イライラしているときは「自分はダメな奴だ」というような、自分を責めるような自動思考が浮かんでいることが多いです。「イライラ・モヤモヤに対して自分を責める自動思考が働く→自責に対してイライラ・モヤモヤを感じ、より苛烈に自分を責める」というようなネガティブなサイクルが生じ、増幅することもよくあります。ですので、イライラの悪循環に気づいた場合、自分を責めるのではなくて労わるアプローチが有用です。これをセルフ・コンパッションといいます。

自分を労わると聞くと難しそうにも感じますが、イライラしたり落ち込んでいる友人に「あんたはダメな奴だ」と責めることはあまりないかと思います。そうではなくて、励ますことが多いのではないのでしょうか。友人を励ますように、自分に言葉をかけてあげましょう。

  • 次は良いことがある
  • 上手くいくことばかりじゃないよ
  • 相手に振り回されることだってある
  • よく頑張っているじゃないか

うまくいった(いかなかった)ことを振り返ろう

スポーツに得手・不得手があるように、こころにも得意・不得意があります。呼吸法で切り替わる人もいれば、少し離れて好きな音楽を聴けば落ち着ける人もいます。自分はどうすれば落ち着けるのかを整理し実践する中で、イライラの渦中に飲み込まれて何もできないのではなく、実はコントロールできている自分に気づきます。その気づきを経て、少しずつ自信がついていき、いつの間にかイライラに直面してもそれほど動揺していない自分に成長していきます。

「自分を褒める、労わる」の項目で「友人のように自分を励ます」というアプローチを説明しましたが、落ち込んでいる人にとってはまずは何より「誰かに話を聞いてもらう」という体験そのものが必要であったりします。こころも同様で、「誰かに語り、理解する」ことそのものに癒しがあります。ぜひ、自分のこころが「何を感じ、どう考えているのか」に耳を傾けてみてください。問題解決の糸口が見えてくるかもしれません。

まとめ

  1. 深呼吸や筋弛緩法によって、イライラは緩和される
  2. 自分を責めるような自動思考がイライラやモヤモヤに関連している
  3. 自分自身への気持ちへの気づきを深める(=セルフモニタリング)によって、少しずつイライラに対処できるようになる
  4. 落ち込む友人にするように、自分を褒めたり、励ますことで自責的な自動思考が和らぐときがある
  5. うまくいった(いかなかった)ことを振り返ることで少しずつ自信がつき、問題解決に近づく可能性がある。

それでもイライラ・モヤモヤが治まらないときには

これらの方法は劇的にイライラ・モヤモヤを緩和する方法ではないかもしれません。しかし、対処法を実践しながら「自分が何を感じ、どう考えているか」を整理していくと、時間はかかりますが少しずつ気持ちや行動に変化が現れ、その変化は自信にもつながります。

カウンセリングも同様で、「イライラやモヤモヤが消え去る魔法の言葉」はなかなか見つからないかもしれませんが、自分で気持ちや行動をコントロールができるようになることで、少しずつ自信が付き問題解決に近づきます。

興味関心のある方・質問のある方・実際にカウンセリングを受けてみたい方はこちらのフォームからお問い合わせください。経験豊富な心理カウンセラーが問題解決のお手伝いをいたします。

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