子育てがうまくいかない。
人間関係でトラブルが続いている。
自分に自信が持てない。
今日は何とか乗りきったたけど、明日はどうなるか分からない。しんどい。先の事を考えるだけで憂鬱だ…。
人によって悩みは異なりますが、モヤモヤして眠れなくなったり、何をしても面白くなくて、嫌なことばかりが反芻してつらい。誰かに相談をするのも抵抗があるし、「そんなことで悩んでいるの」と思われたらどうしよう、不安だ…と、誰にも言えないままモヤモヤが膨らむ体験、誰しもおありかと思います。
モヤモヤへのアプローチ方法はいくつかありますが、まずは確認したいことが二つあります。それは「モニタリング」と「コーピング」をどの程度扱える状態であるか、ということです。
「コーピング」と「モニタリング」
コーピング
ラザルスというアメリカの心理学者は、ストレスへの意図的な対処方法を「コーピング」と名付けました。モヤモヤを消し去ることは出来ませんが、意図的に適切な対処を実践することで緩和することは出来ます。私たち一人ひとりのあり方が異なるように、ストレスの受け止め方も、対処方法も異なります。
コーピングは、あればあるほど望ましいです。レシピを知っているほど、予算やシチュエーション、食べる人にマッチした料理が出来るのと同じです。コーピングがたくさんあれば、それだけ様々な状況に応じた対処方法が出来るということです。
ドラマを見る、歌を歌う、お酒を飲む、絵を描く、深呼吸をする…etc、どんなことでもよいのです。しかし、仕事中のコーピングに「お酒を飲む」を選択してしまうと、重大なリスクを背負うことになります。ですので、家にいるときはドラマを見る、仕事中は深呼吸をする、など、その場にマッチしたコーピングを選べるようになることがとても大切です。
コーピングのスキルは非常に重要です。イライラ・モヤモヤは生きている限りゼロにすることは出来ません。しかし、イライラ・モヤモヤを感じたとき、その場に応じたコーピングをすることで気持ちを切り替えることが出来れば、イライラ・モヤモヤを和らげ、なおかつ俯瞰的に捉えることが出来ます。俯瞰的に捉えることが出来るということは、その問題を「今すぐ解決することなのか、それとも様子見していいことなのか」「解決のためにできることはありそうなのか」と冷静に評価し、複数の選択肢から吟味が出来ます。その「冷静に評価する」ことがポイントです。「なんだかわからなくてモヤモヤする」「何をどうして良いか分からない」というのが人間、とても苦しくなってきますので、まずは気持ちを切り替えて気持ちを落ち着け、フラットに選択肢の中から選べることがモヤモヤ解決の第一歩です。
「自分にとってのコーピング」を出来るだけたくさんリスト化すると、「こんなことでもコーピングになるんだ」という気づきがあったり、いざという時に対応しやすくなりますので、おすすめです。
コーピングリストの例:
コーヒーを飲む | カラオケに行く | 友達とカフェに行く | お酒を飲む |
深呼吸をする | 散歩をする | ゲームで遊ぶ | 友達に電話をする |
モニタリング
モヤモヤ感やその前兆など、自分の心理状態や身体反応への気づきが「モニタリング」です。モニタリングがうまくできていれば、どんな時に自分はモヤモヤしやすくて、どうコーピングをすればよいのか対応策を練りやすくなります。練習していくと、モニタリングの精度は向上していきますし、いち早く自分の変化に気づいたり、言語化することでイライラ・モヤモヤを緩和する効果もあります。
モニタリングのやり方はいろいろありますが、コーピングと同様に「自分がどんな時にモヤモヤを抱きやすいのか」を書き出し、整理するのが有用です。メモ程度でも構いませんが、「どんな時に」「どんな場所で」「誰といるときに」「どんな気分(不安、怒り)がどの程度(1~100で点数化するなど)」とある具体的な言葉にしていくと、より自分自身の傾向が分かりやすくなりますし、対応もしやすくなります。
ただ、書き方のハードルを上げてより負担感を強めてしまうとかえってマイナスになってしまいますので、気楽に出来る範囲でスタートすることをお勧めします。まずは小さなことから取り組んでみて、出来そうなら少しずつ新しいことに挑戦し、自信や意欲に繋げ、良い循環を目指しましょう。
モニタリングの例①
子どもが言うことを聞いてくれないと、イライラ | 夫と子どものことを話し合うと、平行線でモヤモヤする |
子どもの夜泣きが続いていて、しんどい | 毎日、職場の上司がネチネチと絡んできてムカつく |
モニタリングの例②
出来事 | どんな時 | どんな場所 | 誰といると | どんな気分 |
子どもが言うことを聞いてくれない | 朝、保育園の登校準備 | 玄関 | 3歳の娘 | 怒り60不安70 |
②の例となると、もう少し突っ込んで「朝、忙しい時に娘が準備をしてくれなくて、腹が立つけど、いつまでこんな風にやり取りが続くんだろうと思えて、とっても不安になってくるんだよなぁ…」と振り返ってみても良いかもしれません。この例の方であれば、コーピングを試しても良いですし、「心配だから、一度小児科や保健師さん、公認心理師に訊いてみよう」と選択肢を検討したり、「3歳は自我が芽生えてくる時期だから、イヤイヤいうのはある程度仕方がない…私の気持ちを切り替えながら、もう少し様子を見てみよう」と異なる考え方を模索するのも一つです。異なる考え方の模索は、認知行動療法の技法のひとつであり、今後ご紹介できればと思います。
まずは気持ちの切り替えを
モヤモヤする時にまずは確認することは、気持ちの切り替えや気づきがどの程度出来ているのかに意識を向けるということでした。当たり前と言えば当たり前かもしれません。少しズレるかもしれませんが、厚生労働省が発行している「これからはじめる職場環境改善」によると、日常的なメンタルヘルスの向上によるストレスの軽減が、生産性に良い影響を与える旨が提言されております。
子育てでも同様で、普段からこまめに自分の気持ちを点検し、切り替えることが自分にとっても、子どもにとっても、双方のメリットになります。ダイエットに近いかもしれません。巷には様々なダイエット情報が溢れかえっていますが、日ごろから適度に運動をし、ほどほどに好きなものを食べつつ、節制する生活を継続していくというごくシンプルな方法が効果的であることもあります。こころも同じく、まずはシンプルに、「自分がどう感じていて」「どんな時にどんなことをすると気持ちがホッとするのか」にスポットライトを当てることが有用ですし、特にスタートラインとしては明確で、手を付けやすいのではないでしょうか。
私がカウンセリングをお引き受けする際も、今できていることやご相談者様の強みをまずはお聞きしながら、問題解決にどう結び付けていくかを話し合うところからスタートすることが多いです。強みを問題解決に結びつくにあたって考えるポイントを、今後は発信できればと思います。