そのままでいい?変わらなきゃいけない?と、揺れるあなたへ

「ありのままでいいんだよ」という言葉に、どこか救われた気持ちになることがあります。
でも一方で、「このままでいいのだろうか」という焦りや、自分を変えたいという思いも、私たちの中にはあるのではないでしょうか。

“あなたのままで”と“自分を変える”。この二つのあいだに、私たちはどんなバランスを見つけたらよいのでしょうか。

カウンセリングの現場でも、「変わらなければ」「でも変われない」という狭間で苦しむ方に、私は何度も出会ってきました。
今日は、このふたつの間について、私なりの考えをお話ししてみたいと思います。

「ありのままでいい」とは、存在へのまなざ

「ありのままでいい」というのは、表面的な励ましではありません。
それは、その人の存在そのものを肯定し、受け止めるという姿勢に根ざした言葉です。

カール・ロジャーズは、クライアントの変容に必要な条件として「無条件の肯定的配慮(Unconditional Positive Regard)」を挙げました。
これは、「うまくやりたいけど、うまくできない」「自分がダメな人間だと思えて仕方がない」――そうした体験そのものを、まずはありのままに受け止めることです。

ただ感じているのではなく、それはこれまで生きてきた中で、誰かと出会い、困難と衝突しながら形作られてきた考え方や構えです。
だからこそ、「ありのままでいいなんて、きれいごとでしょ」と言われるときこそ、「あなたがそう感じてきた歴史があったんですね」という土俵に立つ必要があります。

その上で、どんな言葉や感情であってもまずは受け止められることで、人は少しずつ「そのままでもいいのかもしれない」と安心できるようになっていきます。
そしてその安心の中から、ふと次のような問いが浮かんできます。

「でも、それって本当に、自分が進みたい方向なのかな?」

「このままでいいのだろうか」という問いが生まれるとき

“ありのままでいる”ことは、安心をもたらします。
でも、“ありのままでい続ける”ということには、ある種の苦しさもあるのかもしれません。

ロジャーズは、「人間には、自然と成長しようとする力がある」と述べています。
言い換えれば、人はどこかで「このままではいけない」と感じる、内的な動き=成長への欲求を持っているともいえるでしょう。

もちろん、その成長を妨げるものはたくさんあります。
それは精神的な症状であることもあれば、経済的な困難、制度の壁、社会構造の問題であることもあります。

たとえば、こんな方がいらっしゃったとします。
「5歳の息子を見ているとイライラして、つい強く叱ってしまう。私って、虐待するような母親なんでしょうか…」と。

この言葉だけを切り取れば、「子どもとの関わり方を一緒に見直していきましょう」という方向になるかもしれません。
けれど、その方が「実は夫がリストラされ、経済的にも将来にも大きな不安を抱えている」という背景を話してくださったとしたら――?

その場合、まずは「家族関係が安定するために何が必要か」という支援が必要になります。
たとえば、実家からの援助を受けられないか、就労をどう再開していくかといった具体的な戦略を一緒に考えることになるでしょう。

そして、少しずつ環境が整い、生活に余裕が出てきたとき、ふとこんな言葉がこぼれるかもしれません。

「実は私も、子どもの頃に厳しくしつけられていて、あの子を見ると、その頃の自分を思い出すんです」

成長には「安心」が必要です

人は、安全・安心が確立されていない状態では、本当の意味で前に進むことはできません。
そして多くの場合、「安心から目をそらすこと」そのものが、その時点での生きのびるための戦略になっていることもあります。

だからこそ、今起きていることをゆっくりと確認し、「では、どうしたらいいか」を一緒に考えることが、とても大切になります。
そのためには、まず「あるがままでいること」が必要なのです。

たとえば
エベレストに登頂することを想像してみてください。
猛吹雪の中で、先に進むことはできませんし、かといって簡単に引き返すことも難しい。
そんなときに必要なのは、安全な「ベースキャンプ」です。

機能しているカウンセリングは、このベースキャンプのような場所だと、私は考えています。
この場で休息し、体勢を立て直し、次の作戦を練ることができる。
だからこそ、人は「どうすればいいのか」「何が大切なのか」を、少しずつ自分のペースで見出していけるのです。

「変われない」のではなく、「変わることができない状態」がある

私がこれまで関わってきたトラウマ臨床の現場でも、こころの傷がどれほど
「ありのままでいること」も、「先に進むこと」も妨げてしまうのか
そして、その結果として人は、自分自身に対して「私はダメな人間だ」と価値を下げる視線を向けてしまうのか
そうした場面を、何度も目にしてきました。

トラウマからの回復は、一朝一夕では進みません。
でも、適切なサポートを受けることで、人は少しずつ、確かに変化・変容していくことができます。

あなたの歩幅で、歩き出してみませんか

もし、あなたが今「ありのまま」と「変わること」のあいだで揺れているなら――
かわむらカウンセリングセンターは、あなたが向かいたい方向に進むお手伝いをいたします。

変化には、その人なりのタイミングと歩幅があります。
どうか、あなたのリズムで、あなたの人生を取り戻していく旅をはじめてみてください。

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