半年ぶりの更新

新年にわずかずつでも更新しようという決意をしたにも関わらず、半年もブログを放置していました。
我ながらこんなに口先だけのことがあるかと思いますがやってしまったものはどうしようもない。

しかし、滞るには、滞るだけの理由があるのです。

言葉の両義性

世の中には、こころにまつわる様々なメッセージが溢れかえっています。


「つらくとも、置かれた場所で咲く花になりましょう」
良いこというねぇ!
「つらいときは、まずは問題を分析し、PDCAサイクルで解決を目指しましょう」
確かに。
「つらいときは、逃げてもいい」
せやせや。

これら三つのメッセージは、特に間違ってはいません。間違ってはいませんが、「解決を目指すこと」と「その場から逃げること」は真逆ともいえるつらさへのアプローチ方法であり、両義性を示しています。


ラザルスという心理学者はストレス反応に対して主体的に働きかけ、和らげる行動をコーピング行動と名付けました。
コーピング行動はいくつかの種類があります。

  • 情動焦点型コーピング:ストレスによって生じるイライラや不安といった気持ちにフォーカスし、和らげるコーピング行動
  • 問題焦点型コーピング:問題そのものに働きかけ、改善することでストレスを緩和するコーピング行動
  • 回避・逃避型コーピング:問題から距離を置くことでストレスを緩和するコーピング行動

先ほどのメッセージで言えば、「つらくとも、留まることの意味を再検討し、『そこで花として咲こう』と考えを修正することでストレスを緩和する」のであれば情動焦点型コーピングですし、「つらくて、ボロボロになりそうならば、被害を最小限にするためにその場を離れよう」ならば回避・逃避型コーピングに該当すると思われます。これらに間違いや上下はありません。その状況に応じ柔軟に実践することが肝心です。

こころの多義性

問題を解決しようと働きかけることも、その場に応じた考えに修正することも、それから、危険から逃げることも、人が生きるために身に着けた力です。正しいも間違いもありません。しかし、どう生きたいか、自分の向かいたい方向に近づく行動は何か?を検討し、選ぶことは出来ます。


「月100時間残業をしているけど、置かれた場所で咲くために留まろう」と考えを改めれば健康を害してしまうでしょうし、「いつも1週間で仕事を辞めてしまうが、今度の仕事は給与も人間関係もとてもいい。でも、どうせみんな俺を馬鹿にしているに違いないから今すぐ仕事をやめちまおう」ならば、やめるべきかを吟味するという選択肢も有用かもしれません。

こころは多様です。そして、メッセージをどう受け止めるか、人によりけりです。同じ人間であっても、コンディションや環境次第では極端に受け止めてしまう恐れがあります。それくらい、ひとのこころは多様で、グラデーションがあります。「置かれた場所に咲く」という考えが50%くらいのときもあります。「まぁ、出来るだけ同じ場所で咲く方がいいけど、逃げた方がいいよね~」くらいの感じですかね。でも、100%になると「同じ場所にいないとだめだ。別の場所に行くような俺は、とんでもないダメ人間だ!!」くらいの熱量になっているかもしれません。

ここに、ブログの更新が滞る理由がありました。


生存のため、今すぐ逃げた方が望ましい状況の人が「考えを改めてその場にいよう。自分の命よりも、仕事が大事だ」と健康被害をスポイルし、仕事に邁進してしまえば命を脅かされます。「やっと、居場所になるような職場に出会えた。でも、人に迷惑をかける前に、自分みたいなダメ人間は立ち去った方がいいんじゃないだろうか…だって、つらければ逃げればいいって聞いたし…」と、せっかくいい職場に出会えたのに機会損失のリスクを生じさせる可能性があります。

このブログを見ている人なんていないかもしれませんが、こころが苦しくなって、藁にもすがる思いでたまたまいろんな言葉で検索しているうちに、このサイトにたどり着く人も0とは言い切れません…。そうなったとき、末席とはいえカウンセラー。果たしてそれでよいのか…。

そんな言葉がグルグルと渦巻き始めると、ブログどころではありませんでした。


しかし、私事ですが今年は認知・行動療法学会での事例発表に向けて抄録を執筆しました。その産出の過程を通じて、自分の心理臨床に向けた思いや考えは、発信していくべきだと強く思いました。発信し、言葉にすることで自分のこころの引き出しに落とし込み、また、それはこれからの自分のカウンセリングで再生できるのではないかと。

そして、世の中にはごまんとカウンセリングセンターがあって、相談される方は自分に合ったセラピストを選ぶことになります。
私が自分の考えを発信し、相談者様が吟味することで「このセラピストの考えは自分と共鳴する部分があるかも」「こういう考えの人に、聞いてほしい悩みがある」といった安心感を持っていただければよいなと思っています。

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